【32歩目】問いかける技術

こんにちは、認定NPO法人アカツキの永田です。

2015年から続くブログ『ひとりでできぬもん!』、NPOのファンドレイジングやコミュニケーションについて、その時気になっているテーマを取り上げていきます。

今回は、NPOを運営していく中で結構悩ましいと思われること、アカツキのコンサルディングでもテーマになることが多い、「どうやってみんなの意見を聞いて決めるか」について。
この、みんなの意見を聞く〜というのが、シンプルなようでいて実は難しい。主には投げかけの方法で、言葉選びの時点で、結果はかなり変わってしまうと感じています。

例えば、事務局長がスタッフに意見を聞く、または代表が理事会の議題にする時のイメージで書いてみます。


A)『今度イベントを開くのですが、このような企画でいきたいと思います、良いでしょうか?』

→ この場合、実質的に議論にならないことが多い、意見を言いにくい聞き方です、なぜなら、問われた側の回答が「イエスかノーか」に見えてしまうためです。
特に投げかけた側の立場が強い場合、それを否定するのはかなりやりづらいこと、実際に意見を出されても受け止める側も批判された、否定されたように感じがちになるからです。

B)『今度イベントを開くのですが、どんな企画をすればいいと思いますか?』

→ かなり自由度の高い問いかけに見えて、これも実は答える側の難易度は上がってしまいます。前提の知識や情報が揃っていないと、奇抜なアイデアやその場の思いつきに終始する、雑談のような場になってしまうからです。
結局、「それはこういう理由で無理だ、それは趣旨がわかっていない発言だ」と否定されることが多く、結局実現可能な落とし所を中心人物が出して、「ではそれで」となりがちです。

C)『今度のイベントで呼ぶゲストを、□□さん、××さん、△△さんの三者の中から選びたいのですが、どなたが良いと思われますか?なお、今回の企画のゴールは〇〇で、それぞれに必要な謝金、今期の残り予算、話して頂けるとテーマはこの資料にあります』

→ 準備が大変ですが、これなら論点が絞られており、選択肢が提示され、また判断のための前提情報が共有されているので、意見を言いやすくなります。また、参加者から質問が出ればより深い条件の確認もできるようになります。
ただ同時に、発想の幅が狭くなる、論点の設定次第で誘導できるリスクもあります。


テスト問題で言えば、Aは◯×問題、Bは記述問題、Cは選択問題と例えられるかもしれません。
実際にはメンバー同士の関係性、役職の力関係、経験年数、知識や情報量、意思決定にかけられる時間によって、その時どの投げかけ方法を選ぶのが良いかは変わります。

ただ、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人が関わる組織ほど、それらを活かすマネジメントや丁寧なコミュニケーションがなければ、ただバラバラになるだけです。

聞いてるけど聞いてはいない、或いは、聞いたけど、本当にただ聞いただけで意見は汲み取られない。中心人物にそんなつもりはなくても、心からみんなに聞いてみんなで決めたつもりでいても、実は、裸の独裁者に見られてしまっていることもあるかもしれません。

自分自身、投げかけが下手で、理事や職員の仲間にフラストレーションを与えてしまったり、ぶつかったりしながら、少しずつより良い合意につながる姿勢と振る舞いを身につける努力をしてきましたし、未だ修行中なのですが。

*本ブログ記事の写真には、2021年度「認定NPO法人山村塾」さんにコンサルティングで伺った際の写真を使わせて頂いております。なお、本文内容と直接の関係はありません。