【4歩目】正直さとせいじつさと心構えと

『正直さと誠実さとは何が違うと思う?』
僕が東京でのインターン修行を終える前に、(勝手に)師と仰ぐ人からこんな問いを投げかけられました。

「正直さ」と「誠実さ」との違い、その時の僕にはよくわかりません。
その人は、そのままこう続けました。『もちろん、日本語の辞書的な正解を伝えたいわけではない、ただ僕はこんな風に考えているんだ。』『行動に言葉を合わせるのが正直さ、言葉に行動を合わせるのが誠実さ、ではないかと。』

つまり、行動、自分が今できていること、やっていることを説明すること、それは確かに【正直さ】です、ただ、そこには事実以上の広がりはない。
その人が大切にしたいのは、【誠実さ】。今できていることだけを伝えるのではなく、自分が理想とすることを少し前の方に投げてみる。そして、それが嘘にならないように、日々努力してその言葉に行動を合わせ、近づいていく生き方を選ぶこと。

僕は今でも、この問いかけと答えが、ずっと心に残っています。

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そしてもう一つ、【 Have < Do < Be 】という考え方も、その人から学んだと思っています。

Haveは、人が何を持っているか、それは例えば財産や体力やルックスかもしれませんし、仕事で言えば専門のスキルや知識です。
Doは、人の行動、率先して動いた事実や、発言です。
最後にBeは、人が他人や仕事に向き合う、あり方、姿勢、心構えです。

一般的な仕事において、人が人を評価しやすいのは、Haveと、先にある「成果」でしょう。ただ、本当にHaveさえあればより良い仕事、より良い社会に向かうのでしょうか。
西村佳哲さんの著書「関わり方の学び方」では、どうもそうではないようだ ということが、氷山モデルの図解とともに書かれています。(詳細は以前僕が勉強のために書いた こちらのブログ をご参照ください)

確かに、これまで僕が尊敬してきた先生や先輩は皆、スキルや知識ではなく、人に優しく思い遣りを持ち、勤勉で自ら実践する人ばかりでした。Haveを求めたからではなく、Beが先にあったからこそ、そこにその人はいるのだと。
社会的にはエリートと呼ばれるような立場にいたとしても、相手に関わらず、真っ直ぐ立つ、真っ直ぐ相手を見る、その姿勢に自分が恥ずかしくなったこともあります。

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上記の二つの経験から、僕は仕事において「誠実さ」や「あり方」を重視することにしました。

アカツキ立ち上げの際にも、スペックや肩書ではなく、人柄と振る舞い、あとは思想や価値観で理事を選ぶという姿勢を徹底したからこそ、今、それぞれのメンバーの本来の魅力や力が活きているのではないかと考えています。

そして、それら重視する「姿勢」が法人として形になったのが、2015年4月、アカツキ【就業基本心得】の誕生です。
NPOにとってビジョンやミッションはもちろん大切で、それを言語化するワークや共有する時間をとることは不可欠です。
ただ同時に、ビジョンやミッションだけでは話が大きすぎて、具体的な事業や仕事に反映するイメージが湧きにくい。そこで、その間をつなぐ存在として、私たちは【就業基本心得】という表現方法を選びました。

それは一般的な民間企業で言えば、リッツ・カールトンホテルのクレドや、NPO業界では、フローレンスWAYや、クロスフィールズWAYにあたるものかと思います。

以下に転載します。

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NPO法人アカツキ 就業基本心得

その1 互いの出番をつくること。
業務上の役割に敬意を払い、互いに活かし合う関係性をつくる。

その2 分からないを大事にすること。
対話の中で分からないことを共有し、互いによく聞き受け止める。

その3 目指す社会の一員になること。
当法人のビジョンと、個々人の業務に携わる姿勢を一致させる。

その4 小さな学びを積み重ねること。
「急がばまわれ」の意識を持って現場から日々学び、組織の共有知とする。

その5 心地良く休める環境をつくること。
互いに関心を持ち、心地良く休める環境をつくるために支援し合う。

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もちろん、これはいわゆる就業規則のように、経営者が労働者に課すルールではなく、内部の職員と理事で話し合って言葉を作っていったものです。
就業基本心得そのものが目的ではなく、そこに向かうコミュニケーションのプロセスに、相互理解と約束があった。だからこそこれらの言葉は、皆で育てていくべきものになるのだろう と。
少し、大げさかもしれませんが、皆さんは団体のメンバーを「人」として見て、誠実に接することが出来ているでしょうか。いつの間にか、仕事を前に進める「手段」として利用しあう関係になっていませんか?
どんな心構えで仲間と向き合うか、それはそのまま、団体の受益者や支援者に伝わってしまうものだと、僕は感じています。
その難しさに常に揺らぎ反省を続けながら、自戒を込めて。

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*本ブログの写真は、アカツキ平成27年度通常総会及びトークイベントのものを使用しています。
photo by Yuji Sasaki

文責:永田賢介