【15歩目】行動できない人も批判していいんです

こんにちは、NPO法人アカツキ代表理事の永田です。ブログ『NPOの内部コミュニケーション~ひとりでできぬもん!~』は、ほぼ丸一年ストップしてしまっていました。理由は、業務量と体調のバランスでしたが、またこれからコツコツ、月一ペースを目標に書いていきたいと思っています。

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さて、今回のテーマは、大学生の頃から僕が気になっていること「行動できないやつは口を出すな(行動する人こそ偉いのだ)」に対するアンチテーゼ(反命題)と言えるでしょう。
この理屈は、リスクをとって物事を前に進めるという点で、一見正しいようにも見えますが、こと組織においては使い方を間違えると多様性と創造性を封じ、特にNPO法人の場合は、法人格に込められたアイデンティティとの自己矛盾すら起こしてしまうのではないか と、思います。

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まず、小さい定義としての組織内部から、具体的なイメージを挙げて考えてみましょう。
事務担当職員と保育担当職員の間で、「さっきの子どもへの接し方、少し言葉がきつかったんじゃない?何か疲れてるの?」「私は毎日いろんな子どもの相手してるんだから、これでいいの。資格もない人が口出ししないで」………。
もしくは、理事と職員の間で。「もっと長期的視点で全体を見て、みんなの話を聞いた上でマネジメントしてください」「こっちだって色々考えて悩みながら意思決定しているんだ!文句言うなら君が経営者やってみろ!」………。

このように、「行動できないやつは口を出すな」は、異なる役割を担うチーム間において、客観的なフィードバックの機会と互いの役割分担に対する敬意を失った、ともすると粗雑なコミュニケーションになりがちです。

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では、次に少し大きな定義としての組織内部を考えてみましょう。
NPO法人における意思決定の最高機関は、正会員で構成された総会です。しかし、実際には創業者である代表や、理事兼職員、在籍年数の長い理事の意見が尊重され、正会員からの意見や質問、ともすると出席すらなく委任で済まされていることが少なくありません。

これは、理事や職員側だけでなく、もしかしたら会員側にも「行動しないやつは口を出すべきではない」という意識が少なからずあるからではないでしょうか。結果的に、組織の意思決定における多様性は薄れ、似た考えだけの人の集まりになったり、代表者の言うことに従う、忖度(そんたく)できる人ばかりが残ることになりかねません。ガバナンス=組織の緊張関係は薄れていきます。

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オーナー経営・家族経営の、小規模な営利企業であればそれもいいのかもしれません。しかし、社会的に不利な立場におかれたーーーつまり、行動できない状況に置かれた人の声を代弁(advocatyの語源)する役割を持つNPOが「行動できないやつは口を出すな」と言い放ってしまった瞬間に、それは受益者や市民のためではなく、事業者のための活動になってしまうリスクがあるのではないでしょうか。

「行動できないやつは口を出すな(行動する人こそ偉いのだ)」の価値観は、今の社会全体にも蔓延しています。本来”手段”であるはずの、古いものを壊す・新しいことを始めることそのものが”目的”化され、「やらない方がいいのではないか」という声は無視されています。
十分な議論や対話のプロセスを経ずに社会に生み出されたものは、意識せず誰かを傷つけることに無自覚である と、僕は言いたくなります。

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それでも、いえ、だからこそ僕たちは直接自分が行動できないことに対しても声をあげる必要・責任があるのだと思います。発言する人と、行動する人は必ずしも同じである必要はない。むしろ批判的な発言をすることも、行動の一つと言えるかもしれません。

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マハトマ・ガンジーも、アドルフ・ヒトラーも、個人の人格や価値観や行動だけで英雄や独裁者になったのではないはずです。人々の願いや祈りや発言が、「世論」や「ムーブメント」となり、彼ら一人の人間の形を”器”として、多くの「ふつうのひとたち」が、善くも悪くも社会を変えたーーー そしてそれは、これからも同じだーーーと、僕は思っています。

もちろん、アカツキという組織自体もまだまだ永田個人の影響力を十分に薄めることができず、四苦八苦している毎日です。ただそれでも、「言ってくれる」「口出ししてくれる」人がいるからこそ、迷いながら悩みながら、行動することができています。

 

文責:永田賢介
Photo by:Yuji Sasaki
本記事内の写真は、アカツキ5周年記念パーティーのものを使用しています。


*追記

一風変わったアイドルとして、硬派な歌詞と激しいダンスで、いわゆるアイドル好きとは層が異なるファンも多いと言われている『欅坂46(けやきざか)』
特に以下の3曲の歌詞は、社会の不条理や多数決、大きな力に対して、自分の信念で立ち向かう自分を鼓舞してくれるようなメッセージが込められているように感じます。もし、ご関心あればぜひ。(YouTube公式チャンネルより)