【17歩目】潜在的な寄付者と出会う「GOOD」と「LIKE」のコミュニケーション

こんにちは、NPO法人アカツキ代表理事の永田賢介です。『寄付者が主役のファンドレイジング〜ひとりでできぬもん!』第2回目は、人が寄付する時にどんなモチベーションを感じているか?をシンプルに整理してみます。

アカツキは、ファンドレイジングのコンサルティングに入る際には、ほぼ必ずその団体の「既存の支援者」にヒアリングをさせてもらうことにしています。
そこで、わかってきた寄付者のモチベーションの種類を、アカツキ独自の言葉の定義づけでフレームワークにしたものがこちら、日頃から講座で使用しているスライドです。まずは、「GOOD(脳)」と「LIKE(心)」の2つの動きに注目しました。

「GOOD」というのは、日本語で言えば「いいね!」と言い換えることができます、つまり、団体の活動内容に対する評価や判断です。“その活動が必要・重要だと思うから支援する”ということですね。
それに対して「LIKE」は、日本語で言えば「すき!」と表現するのがいいかと思います。つまり“信頼するあなたが頑張るなら応援するよ”ということです。

一般的に、NPO向けの広報やファンドレイジングの理論では、「いかに自分たちの活動が社会的に有意義で、成果を出せるのか」をPRしましょうと言われますが、人は決して正しさだけで脳で判断して動いているわけではありません。人は人を見て、心を動かされ、行動が変化します。

実際に、日本ファンドレイジング協会が発行する寄付白書のデータをこの観点で整理すると以下のように読み解くことができます。

実際に、環境問題・子育ての大変さ・マイノリティとして生きることなど、NPOの代表やメンバーが人生数十年の中で感じた重要性を、1時間のプレゼンやWebページだけで寄付者に理解させる という感覚自体が、やや非現実的ではないでしょうか。(それがもし可能だとしても、課題の背景にある社会構造を単純化させる危うさが残ります)

だからこそ、まずは自分自身をかけて投資をしてもらう。
下の図の3名は、いずれも同じ途上国の貧困支援団体に1万円の寄付をした人ですが、そのモチベーションの内訳は異なるということをご説明するためのサンプルです。

アケミさんは、大学で国際文化を学んでおり、NGOを研究するゼミに所属。将来は国連関係機関で働くことを望んでおり、この団体のプレゼンを1度聞いて寄付することを決めました。

一方、としおさんは、この団体の代表のお父さんです。ご自身は海外に行ったこともなければ「難しい社会問題の話なんてわからない!」と言いますが、息子に対して「お前がそこまで頑張っているのなら応援するよ」と寄付をしてくれました。

さちこさんは、現在普通の会社員として働いています。実は大学時代にバックパッカーとしてアジアを旅していた頃に貧困の現場を見ていましたが、何もできないことにモヤモヤしており、今回、その頃の友人が働く団体に声をかけられて、寄付をしました。

 

いかがでしょう?これはあくまでもサンプルですが、皆さんの身の回り、またご自身でも当てはまりそうなイメージがつくのではないでしょうか。

ちなみに、アカツキはただでさえ認知がまだ十分ではないNPOである上に、「ファンドレイジング」「コミュニケーション」「コンサルティング」など、さらにわかりにくい単語と活動内容で、「GOOD」が非常に訴求しにくい団体です。

だからこそ、私たちは無理にNPOの価値やコンサルティングの重要性を市民に語るよりも、まずは「永田くん頑張ってるね、若い仲間で取り組んでるんだね、理事の顔も見えるね。」と感じてもらえるように「LIKE」を打ち出していきました。

そして起業から2〜3年たった頃に、ずっと支援してくださっていた会員の方から「あ〜なんかやっと、アカツキのやっていることが何となく分かってきた(笑)」と言って頂くことができました。時間をかけて、「LIKE」から「GOOD」に移行したと言ってもいいかもしれません。

もちろん、カリスマの代表を全面に押し出し、個人への「LIKE」だけでファンドレイジングを成功させる団体も中にはありますが、それはそれで、持続性がなくなってしまいますので、注意する必要があります。

実際には、さらにもう一段階深く「GOOD」を読み解いていくと、「共感(右脳)」「納得(左脳)」に分かれたり、それらの自団体潜在力を点数するワークもあります。他に、「LIKE」から「仕組み」にいきなり飛ぼうとする前に、複数属人化を進めブランディングしていく考え方や、飛び道具的な面白さで寄付を集める「FUN」というものもあると思っていますが、講座やセミナーのネタバレになってしまうので、ブログではこの辺で。

いずれにしても、日々の努力の積み重ねや、人と丁寧に接することを無視して、いきなり支援が集まってくることはないと思いますし、もし有り得るのなら、それはあまりよくないファンドレイジングではないかと僕は考えます。