【3歩目】新ニックネーム制度のススメ

こんにちは、NPO法人アカツキ代表理事の永田賢介です。
アカツキのブログ『NPOの内部コミュニケーション〜ひとりでできぬもん!』第三回目は、団体内部のコミュニケーションを良くするため、アカツキが創業初期から今までずっと続けている、ちょっとした工夫のご紹介です。

それは、今回のタイトルそのままなのですが、「1.団体の理事や職員をニックネームで呼び合うこと」「2.できればその人がこれまで呼ばれてきたものとは違う新しいニックネームをつけること」という2つのシンプルな方法です。

アカツキがただ若いメンバーが多いから、軽いノリでたまたまこうなっている訳ではありません。実はしっかりとニックネーム制度にした理由があります。

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「1.団体の理事や職員をニックネームで呼び合うこと」

これは日常的な会話や会議のやりとりの中で、年齢差や性別を意識する度合いを減らし、対等な対話や議論をしやすくなることをねらいとしています。
例えばアカツキの場合は、理事・職員に元インターンも含めるとこんな感じです。

永田賢介  ▶▶▶ じん
佐々木悠史 ▶▶▶ ゆーじ
松島拓   ▶▶▶ たくみん ☆
原口ゆい  ▶▶▶ ゆいゆい ☆
高柳希   ▶▶▶ のんちゃん
外山幸   ▶▶▶ おゆき ☆
黒田美穂  ▶▶▶ くろろん
鋪田みどり ▶▶▶ みどりーぬ ☆
富永沙和  ▶▶▶ わさわさ ☆
仲野美穂  ▶▶▶ みっひー ☆
大田弥生  ▶▶▶ やっちゃん
☆マークは、アカツキに関わってから新しくできたニックネームです

もちろん、人によって心地よいと感じる距離感は異なるので、ニックネームで呼ぶことを無理強いをしているわけではありませんが、実際に使用するしないに関わらず「そう呼んでもいい、人として対等な関係なんだよ」というメッセージが前提に存在するだけで、上下関係の意識は大分和らぎます。(ニックネーム+さん付け という呼び方もできますし。)

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「上司、または先輩をニックネームで呼ぶなんて、仕事に緊張感が無くなるのではないか」という意見もあるかもしれませんが、我々の信頼関係は、呼び方よりも話の中身や接し方の姿勢に現れると考えています。

また年長者であっても、年下のメンバーに対する敬意を払う場面は当然多いわけです。顧客や支援者のために何が最も良いか本気で考えてぶつかり合う時には、性別や年令よりも、話の中身に集中出来る環境を作ることの方がより誠実な仕事だとも思います。

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「若いメンバーが多いからそういうノリでもいけるんだよ」という意見もあるかもしれませんが、実はこのニックネーム制度を永田が最初に知り、導入したきっかけになったのは、東京で社会起業に関心を持ち、高い専門性やスキルを持つ30〜40代のビジネスパーソンが中心になって作っている組織/コミュニティ『ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)』なのです。

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「2.できればその人がこれまで呼ばれてきたものとは違う新しいニックネームをつけること」

さて、ニックネーム制度はともかく、なぜ新しいものであると更に良いのか。その理由をご説明するには、宮﨑駿アニメの『千と千尋の神隠し』を思い出して頂くのが良いかと思います。

映画の中で、『千尋』という少女は、湯婆婆に名前を奪われ、代わりに『千』というニックネームを与えられます。また、少年『ハク』も自分の本当の名前『にぎはやみこはくぬし』を忘れて自由を失います。名前は言霊のように、その人間の存在そのもの=アイデンティティといっていいほどの、意味・力を持ちます。

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映画の中では「名前を奪われる」という行為がネガティブな意味で表現されていますが、逆に、「名前を与える」という行為を想定するのであれば、人に新しい価値や力、その可能性を渡すこともできるのではないか。

アカツキに新しく関わってくれる、魅力的な人たち。僕は願わくばアカツキという場所が、その人に多面的な人生や価値をつくることができれば嬉しいと考えました。

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一人の人には様々な面があります。会社では頼りがいのある係長として、子どもの前では大らかで優しい母親として、趣味の友人の間ではこだわりの強い頑固者として、夫の前ではワガママな甘えん坊として……などなど。

かつて大学時代に保育の学科で学んだ時には、人間の健全な社会的発達には、アイデンティティが分化していくことが重要であると習いました(これが極端に少ないのがaddict=依存状態であり、ストーカー等の原因にもなるのではとも思います)。また、最近であれば「分人主義」という考え方もあります。

唯一正しい本当の自分なんて見つける必要なんてなくて、キャラで飾るわけでもなくて、自然に様々な「わたし」の可能性が広がれば、人はもっと生きやすく、その“拓かれた”場に愛着を持てるのではないでしょうか。

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実際のところ、この新ニックネーム制度の取り組みが、アカツキの内部コミュニケーションにどれくらいのポジティブな影響を与えているのか、もし、ニックネームでなければどうだったのかを、例えば数値的に証明することはほぼ不可能だと思えます。(しっかり探せば、どこかに心理学的な研究結果など存在するのではないか とも思いますが)

あくまでも実感ベースの内容では有りますが、もし興味を持ってくださったのであれば、お試しで団体内部メンバーそれぞれのニックネームを考えてみるのは如何でしょうか。実際に使用しなくても、少し雰囲気が変わるかもしれませんよ。

文責:永田賢介