【9歩目】向き合う力と諦める力

こんにちは、NPO法人アカツキ代表理事の永田賢介です。
ブログ『NPOの内部コミュニケーション〜ひとりでできぬもん!』

NPOのコミュニケーションにおいて重要なのは、対話と議論による合意形成である ということが、この連載の根底に流れる大きなテーマでありますし、また以前のブログ 『【2歩目】代表が100%満足しているNPOは不健全である』 でも書きました。今回は、更にその中の細かい手法についてご紹介します。

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皆さんは、内部のメンバーでそれぞれの考えが相違した場合、どのようにして方針や施策など、一つの形にとりまとめていきますか?勿論、多数決や、代表の鶴の一声で決めてしまっては意味がありません。では、どうするか?


1つには、フセンや模造紙を使って、ワークショップ的に頭を整理していく方法がスタンダードです。ホワイトボードがあれば、気になった言葉を書き出すところからでも、ぜひ活用したほうが良いですし、コンサルタントっぽいやり方で言えば、マトリクスを使って整理してみるのもおすすめです。もし、金額や人数などの数字データもあれば、それを追加していくことで、更に納得までのスピード感が増します。

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2つめは、とにかく時間をかけて向き合い続けるやり方も時に必要です。ロジックではなく怒りや不安など、感情面で腑に落ちることが必要な場合、世代や価値観の異なる相手と話し合う際には、想像よりも遥かに膨大な時間と精神的体力が求められます。
アカツキの場合、最初の1〜2年の理事会は本当にこれの繰り返しでした。もっと効率よく・スマートに割りきって進める方法も会ったかも知れませんが、その選択をしなかったことが、今の自分達の強みだとも思います。

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最後の3つ目は、「さっさと諦める」方法です。と、言っても、本当にそこで考える事や話し合う事を止めてしまうわけではありません。内部のメンバーだけで答えを導き出すことを諦め、外の人に話を聞きに行くのです。
特に、事業のサービス品質や、支援者への価値の見せ方、Webサイトや冊子等の情報媒体について、議論は細部に及びがちです。しかし、アツくなればなると同時に、そこに「受益者/支援者/ユーザー目線」が抜け落ちがちです。

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いわゆる、マーケティング的な考え方ですが、注意したいのは顧客分析や市場調査というイメージを持ってしまうと、膨大な人数にアクセスしなければ〜、とか、国や行政の正しいデータで無ければ意味が無い〜 と思い込んでしまうことです。
もちろん、情報の精度が高いに越したことはありませんが、実際には、1〜3人ほど、自分たちがその商品や支援プログラムでターゲットに想像している相手に、似た属性を持つ方(例えば、30代女性/福岡市内在住/子育てと仕事両立中…など)を、友人の中からピックアップして、30分ほどお茶をしながら軽いインタビューで意見をもらうだけでも、それまで思いもつかなかったような視点やアイデアが見えてきます。

自分たちの勝手な思い込みに時間を費やし、議論に疲れてしまう前に、「あ、これは我々だけで話し合ってもわからないね、ちょっとSTOP!」と、爽やかに諦める力を身につけること。ビジョンやミッションに重要なのは自分たちのこだわりや夢ですが、それを現実の社会の中で実現するために必要なのは、自己満足に陥らない“受益者(支援者)第一”の姿勢です。


これらは、当たり前のような話にも聞こえるかもしれませんが、特に3つ目については、実際に自分たちがこれに気づくのにかなりの時間を必要としましたし、そこに至る道のりでは、長浜洋二さんの、NPOマーケティングで社会を変える!『草莽塾』でかなり鍛えられました。(ありがとうございました!)

そして、様々なNPOの支援の現場では、このように「諦めて顧客や支援者に話を聞きに行く」ことが出来ないために、内部でいつまでも意見交換にしかならない話し合いが続き、人間関係で疲弊してしまうシーンも少なくありません。
これは特に活動年数の長い団体内部で、メンバーの肩書や経験やプライドを刺激せず、うまく落としどころを見つけるためにも有用な方策です。

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以前、とある尊敬するNPOの方から、このような話をされたことがあります。(多少、永田の補足が入っています)
「ファシリテーションとは、みんな仲良しこよしで誤魔化すのための手法ではない、それは間違っている。ファシリテーションとは、対立を可視化するための手法である。AとBは違う意見を持つ人間であることを前提にし、どこがどのくらい違うのか、どのように譲歩すれば妥協点が見つかるのかを、具体的に探っていくために使用するものだ」
目からウロコが落ちる思いでした。

私とあなたは理解し合えない存在である ということを大前提に置くことで、組織は「向き合う力」と「諦める力」の両方を、矛盾することなくポジティブに両立することができると僕は思っています。

集合写真アカツキ

文責:永田賢介

*本ブログの写真には、草莽塾in福岡2013年度アカツキ参加時のものと、2015年度事務局として開催時のものを使用しています。