【27歩目】緊急事態を“見極める”助成金のつくり方

こんにちは、認定NPO法人アカツキの永田です。

『助成金を出すことの専門性〜ひとりでできぬもん!』では、アカツキ自身が助成金について「助成金を出す側」「助成金を受ける側」「助成金の審査を行う側」と、様々な立場で関わってきた経験から得られた学びや、考え方を、みなさんと共有していきます。

今回は、未だ続くコロナウイルス感染症に対して、助成金・補助金の出し手はどのように現場の困難を把握し、どのようなプログラム・資金によって支援ができるのか?アカツキが現場で見たものから考えていきたいと思います。

まず大前提として、コロナ禍における地域のNPOの困難な運営状況は様々で、ひとくくりに「NPOだからここに困っている」「NPOだからこういうサポートが必要」とは言えないし、言うべきものでもないと考えています。

私たちが、現場でさまざまな団体を見て、また相談を受けていますと、少なくとも5パターンくらいには大別できる気がします(但し、これは統計的データを元にしたものではなく、あくまでも永田の所感であることをご容赦ください)。

A 顧客やスタッフが動けず、大打撃を受けて経営が困難になるケース
→ 留学や旅行など長距離移動を伴う団体、文化芸術活動・お教室系の団体
B 貧困などのニーズが急増し続け、助成金や補助金は取れるが疲弊するケース
→ フードバンクや医療・災害支援などの団体
C 収入に大きな変化はないが、感染症リスク/対策コストが増大するケース
→ 委託による施設の指定管理や、制度系福祉サービス事業などの団体
D もともとお金はあまり使わないが、高齢でオンライン対応など難しく、集まっていた地域の場所も制限され、活動がストップするケース
→ 政策提言やまちあるきなど、市民サークル系の団体
E 短期的には持続化給付金やオンライン化で凌いだが、現場対面での支援ができず、今後寄付金が減少し、財政難となる恐れがあるケース
→ 民間の福祉支援、国際協力系の団体

メディアなどでも表向きその困難さが目立っており、公的な補助や民間の助成金等の支援が多く入っているのはBやCの団体です。しかし、膨らみ続ける支援ニーズに合わせて助成金が「取れすぎる」ことによって、事業拡大のブレーキが効かなくなり、職員が過重労働となりつつあるようです。

小〜中規模NPOにおいて、一人の職員が倒れるだけでも、事業全体がストップするリスクがあります。また、資金があるからといって、トレーニングなしにすぐに動ける即戦力の職員を雇用することも難しいでしょう。助成金を出す側は、このあたり団体のキャパを見極め、ただ多くお金があれば良いだろう ではなく、健全さを維持できるサイズの資金を投下する力が必要です。

AやDの団体は、その困難な状況は外からは見えにくいものですし、一見、「不要不急」と言われがちなサービスや活動内容です。しかし、本当にそうでしょうか。新しい人や価値観との出会い、文化芸術に触れる体験は、人の人生を豊かにし、また、寂しさや辛さの慰め、次に向かう勇気を与えてもくれます。

また、趣味のサークルのような活動にも、実はそこに属するメンバーの交流から、「行き先がある・予定がある・集まる仲間がいる」という、心身の健康に大きなインパクトを持っていることが少なくありません。

人々が、今すぐ動きその活動に参加することができなかったとしても、感染症が落ち着いて「じゃあ動こう!」となった時に、貴重な地域のNPOが経営難で潰れてしまっているのは大きなマイナスです。人々のつながりが失われることは、地域社会の底が抜ける、人々が立ち上がるための力を取り戻す手段を失うことではないでしょうか。

緊急や短期的な支援、事業拡大の支援、弱者をサポートする支援だけではなく。
市民活動や、人々が自分の力で立ち上がる、その時の添え木になるような、長期的な視野を持った支援、適切なサイズを見極める支援、団体を維持するための支援も、必要とされているのではないでしょうか。

地域社会全体でコロナ禍を乗り越えていくためには、団体内部のオンライン化に使用できる、組織の維持・管理費に使用できる、事務体制やファンドレイジングなどの組織基盤を強化するための資金が必要なように思います。それも、子どもや医療福祉に限らず、国際協力・国際交流、文化芸術や地域サークルなど、広く様々な分野において。

そんな助成金のプログラムが、ひとつでも、ふたつでも、増えることを願っています。