【31歩目】オンライン・ファシリテーションでの工夫

こんにちは、認定NPO法人アカツキの永田です。

2015年から続くブログ『ひとりでできぬもん!』、NPOのファンドレイジングやコミュニケーションについて、その時気になっているテーマを取り上げていきます。


コロナウイルス感染症が広がってからはや2年が経ちました。これまで当たり前だったことができなくなると同時に、そこから生まれてきた新しい社会の仕組み・技術・行動規範等もあります。オンラインでの話し合いはその一つですが、なかなか慣れない・好きになれない方も少なくないのではないでしょうか。

アカツキはこの2年間で県外遠方のクライアントが増え、全体の半分近くとなっています。ただ、オンラインは決して対面の代替えにはならず、あくまでも「別物」だという位置付けでご説明しています。

事務所への訪問がなくなり、場の雰囲気が掴みづらくなったり、雑談がしにくいことで人柄を知る機会が減りました。同時に、それまでは業務や時間、場所、家庭の都合等で話し合いへの参加機会が阻害されてしまっていた方とも、一緒になって場をつくっていける良さもあります。

今回は、そんなオンライン上でのコンサルティングでの話し合いで、僕がファシリテーションの観点で工夫していることを9つ、自分のふりかえり整理も兼ねて書き出してみました。

1)目線     2)身振り手振り     3)頷きや首傾げ
4)メモの共有  5)話題を振る      6)ミュートしない
7)録画しない  8)ハイブリッドは避ける 9)自分を見る

 

1)目線

オンラインの場合に限らない事ですが、マスクをしていると顔の表情のかなりの割合で見えなくなり、話してる側が「伝わってるのかな?」と不安になりがちです。
“欧米人は口で感情を読み取り、日本人は目で表情を読み取る”なんて言われたりもしますし、実際に顔文字も、以下のように発展していますが
日本 → (^_^)( ;  ; )(> <)
アメリカ →  :) :(  :-o  *注:横向きに見て左側が目です
僕は、相手の話が興味深い時は目を見開き・まばたきを少なくして注目する、難しい時は目を細めるなど、目を大きく使って伝わりやすいリアクションをするようにしています。

2)身振り手振り

対面の場合は、ちょっとした図解や案の種類をホワイトボードやメモに書いてサッと説明することができますが、オンラインでのメモツールはどうしても文章が中心になってしまいがちですし、モタモタしてしまうことを考えて、遠慮してしまうこともあります。
そのため、例えば「A案とB案が出ていますね」みたいな形で話を整理したい時は、右手と左手をそれぞれ上げ、右手をヒラヒラしながらA案の良さは〜、左手を動かしながらB案の魅力は〜などと、簡易的に空間に図解してイメージを作るようにしています。画面の上から下までをいっぱい使って、3段階の説明をすることもあります。後で「あの件ですが」と、思い出してもらう際にも効果的だと感じています。

3)頷きや首傾げ

「相手の話を聞いている時は、相槌や頷きをすることが必要です」という、傾聴のテクニックを見聞きすることがありますが、ポジティブな共感だけで話し合いが進んでいくことは、分かったふりを増やしてしまったり、合意が取れなくなってしまうなど危うさもあると僕は考えています。
もちろん、話がテンポ良く進んでおり伝わっている時は大きく頷きますが、逆に話すスピードが速かったり、使う言葉が難しかったり、聞き取りにくい・内容に共感できない場合は、首を傾げてみる、うーんと頭を抱えるなど、少し大げさにリアクションするようにしています。そうすることで、こちらから話をカットせず、相手から「何か気になることありました?」と聞いてもらえることがあります。

4)メモの共有

話し合いの内容にもよりますが、オンライン上でみんなの意見を出し合う時や何かを決める時は、画面共有でワードやパワーポイント、Google ドキュメント、ズームのホワイトボード機能などでメモを取っておくと、参加者の中で聞き取れないことがあった時、誤解が起きにくく安心です。
単に記録としてだけではなく、話している側からすると、画面上に自分の話したことが文字として記録されていくことで、「画面の向こう側でも、ちゃんと話を受け取ってもらっている安心感がある」という、フィードバックを頂いたこともありました。

5)話題を振る

オンラインの話し合いでは、間が取りにくかったり、接続環境でタイムラグがあり、二人以上の声が被ってしまい、聞き取れなくなることがままあります。
ワンテンポおいて発声すれば多少はブッキングを避けられるのですが、それを気にして発言自体遠慮してしまう方も多いので、進行役としては少し介入を強めにして、一人ひとり順番に話題を振っていくことも多くなりました(そのためには参加者それぞれの名前を呼べることが前提になりますが、Zoomは名前の欄があるので、記憶力の悪い僕は助かっています)。
必然的にファシリテーター役の権限が強くなりすぎてしまい、逆に「指名されないと発言してはいけない」ような雰囲気ができてしまうこともありますので、自由に話し始める人がいたらあまり介入せずに待ち続けるということも、話題を振るのと同じくらい重要だと捉えています。

6)ミュートしない

オンラインの講座やセミナー、ラジオ等の場合は「ミュートやカメラオフはご自由に、それぞれの楽な形でご参加ください」とお伝えしているのですが、話し合いの場では極力カメラはオンに、生活音が入るなど特段の理由がない場合は、音声もミュートなしでありのまま参加してもらうようお願いしています。
頷きのところと同じですが、話を聞いている時はその賛否も含めてリアクションを届けることが大切だと僕は考えています。「へぇー」や「なるほど」「ん?」「ふむ」など、ちょっとした呟きが音声として入る方が、双方向的で話しやすい雰囲気につながると思っています。

7)録画しない

オンラインでは、ズームなどの機能を使用すると簡単に録画や録音が可能です。セミナーや講座、説明会であればアーカイブを残すことができるので、より多くの人に見てもらう工夫もしやすくなりました。
しかし一方で、話し合いの場が録画されていると、そこでの発言が誰に聞かれるか分からない、言質を取られることで発言のハードルが上がってしまうなどのネガティブな影響があります。仮に参加者に事前に許諾を得ていたとしても、録画していない場合と比べ、発言内容が変わってしまうことはどうしようもできません。
議事録を作成する手間は省けますが、結局は、それを見る側にも負担を強いてしまうため、個人的にはワークショップなど含め、極力録画はしないようにしています。

8)ハイブリッドは避ける

対面とオンラインを併用する「ハイブリッド」は、一見どちらの良い面も取れるように思いますが、アカツキとしては、よっぽど理由がない限りは採用しない(対面かオンラインかに統一する)ことを推奨しています。
理由の一つはハード面、カメラやマイクなどの機材が増えれば増えるほど、費用がかかる上に、接続不良や不調など、話し合いが中断するリスクが高くなること。そしてもう一つはソフト面、画面の「向こう側」と「こちら側」の空気感が分断されてしまい、特に少数側の参加者が相手の状況や雰囲気が掴めず、孤独感を感じやすくなってしまうことです。
ファシリテーションでどのように工夫をしても、この差を完全に埋めることはできませんし、なるべく少なくとしようとするだけで進行役だけではなく、参加者全員の時間やエネルギーが削がれてしまうため、本来話し合うべき内容に注力できなくなってしまいます。

9)自分を見る

最後は、何だかナルシスティックと思われるかもしれませんが。笑
オンラインが当たり前になってから、ズームの画面で参加者それぞれのお顔を見ることはもちろん、自分の顔をかなり見るようになりました。対面での場ではリアルタイムで自分を見ることなどあり得ないので不思議な感じですが、そうして初めて、上記にあったような目線や身振り、顔の動き、表情などを自己認知できるようになりました。
そこで初めて、「ちょっとムスッとしてしまってたな」とか「気づいたら口角が上がってる」などなど、自己理解と同時にファシリテーションのセルフフィードバックを多く得ることができました。コミュニケーションに100点は無く、相手や場の設定によって、同じ振る舞いをしても、場を促進するケース/固めてしまうケースが分かれるため、学んでは手放すことの繰り返しだとも考えています。


まだまだ身体と心が恩来に馴染むには時間がかかりますし、果たして馴染むことが良いことなのかも分かりませんが。0か100かでは無く、今できる「モアベター」を探し続けていきたいと思っています。