【26歩目】資金ではなく「プログラム」が生み出す価値

こんにちは、認定NPO法人アカツキの永田です。

『助成金を出すことの専門性〜ひとりでできぬもん!』では、アカツキ自身の助成金について「審査する側(お金の出し手)」「審査される側(お金の受け手)」「事務局側(お金のつなぎ手)」と、様々な立場で関わってきた経験から得られた学びや、考え方を、みなさんと共有していきます。

今回は、助成金の資金そのものではなく、その資金を出すプログラムそのものに、実は大切な意味や価値があるのではないか?という観点から、書いています。

アカツキは、立ち止まり対話するための助成金「AKBN(アケボノ)ファンド」を開始した2018年3月に、キックオフ的なイベントを開催しました。その名も『立ち止まって対話する必要なんてほんとにあるの?マネーの影響力とAKBNファンド 〜影山知明 × 永田賢介トークセッション〜』

このイベントでは、3時間という枠をゆっくりと使い、参加者の皆さん一人ひとりに、なぜこのイベントに興味を持って足を運んでくださったのか?をお尋ねしながら進めましたが、実はそれによって驚くべきことがわかりました。
約20名ほどの参加者のうち、4〜5名から「実は最近仕事をやめたばかりで」「仕事をやめようと思っている」という人だったのです!そのうちの一人が話してくださったことをご紹介します。

私は今、仕事を辞めたいと考えているのですが、周囲の家族や友人から「次の仕事を決めてから、辞めなさい!」と言われて、とても苦しい思いをしていました。

今、毎日が忙しすぎて、何がしたいとか、これからどうしたいとか、未来のことを考えることができないからです。まず辞めてから、それからゆっくり自分と向き合いたいのですが、そのことに賛同してくれる人がいない。

そんな時、このイベントの告知ページのタイトルを見て、「わかってくれる人がいる!」と感じて嬉しくなり、自分はNPOや助成金を受ける立場ではないけど、参加することを決めました。

世の中全体が、常に前に進むこと、しかも急ぐことを求められる中で、「立ち止まることが大事だよ」というメッセージは、今の私に必要だったんです。

 

このコメントを聞いて、AKBNファンドの助成金は、まだ助成を開始しても、その成果も出ていないけど、本当によかった と、僕は思いました。

助成金は、お金を出して特定の(例えば、子どもの貧困や、組織基盤整備など)取り組みを応援すると共に、その存在そのものが、インセンティブ…つまり、お金が出るならチャレンジしてみようか!という、動機付け、ある種の誘導する力になります。

AKBNファンドは、市民と生活者のための助成プログラムだと思っています。

助成を受けた事業者としてのNPO団体だけが変化するのではなく、立ち止まり対話することで変化が起きるというメッセージを通じて、家庭や、職場や、身の回りの人の関係性が、もしかしたら走り続けていることで疲弊している現状があるかもしれないと気づく、そして少しゆっくり向き合ってみようか という現象が起こることが長期的な成果です。

助成金は、ただお金をばら撒いて感謝される仕事ではなく、助成プログラムという仕組みづくりを通じて、新しくまだ見えない、わかりにくい価値を、未来に向けて提案すること。
そして、その実感や仮説は本当に社会に受け入れられるのか?助成先団体と協力して事例を模索し、エピソードやデータを通じて検証していくことが大切だと、考えています。

 

*本ブログの写真は、上記イベント時のものを使用しています。