【10歩目】呼吸する「いきもの」としての組織

こんにちは、NPO法人アカツキ代表理事の永田賢介です。
ブログ『NPOの内部コミュニケーション〜ひとりでできぬもん!』も、おかげさまでついに10回目を迎えした!!毎回ヒーヒー言いながら、言葉を絞り出している感じです。
FBのいいねくださる方、メルマガから必ず読んでくださっている方もいらっしゃるようで、嬉しい限りです。もし、とりあげて欲しいテーマがあれば、永田までお寄せください。

さて、2016年3月末で、アカツキは常勤職員の松島と、パートである黒田の二人が退職します。松島は理事を継続、黒田はフェローとして新しい形で参画してもらうとはいえ、人員的には3.5から2.0、実質的には掛け算の力でそれ以下になるので、パワーダウンは否めません。
ただ、退職の見込みは1年以上前から話し合って準備してこれたことなので、不安もちろん抱えながらですが、しっかり次につなげていきたいと思います。

今回のブログの内容は、その退職に関連して得ることができた大きな気付きについてです。

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もともと、僕のコミュニティに対する考え方は「入りやすいことよりも、出やすいことが重要である」というものでした。“村八分”という単語や“終身雇用”という文化があったように、農村をベースにした日本のコミュニティは、物理的にその境界線を出入りすることは想定されておらず、むしろ、一度そこから出てしまうことは、死を意味するほどに大きなリスクだと考えられていたようです。

そのため、様々な会社や、地縁組織、サークル、果てはNPOに至るまでが、巻き込むこと・参加させること・疑わせないこと・辞めさせないことに力を砕いてきたように思えます。それがもし、ミスマッチな組み合わせだったとしても。
市民社会の魅力は一つにまとめきれないこと。オルグ的に自分たちの盲信する正義をどれだけ多数派に強固にできるかに気持ちを囚われるのではなく、爽やかに軽やかに、共にする「私たち」を主体的にチェンジできることこそ、多様性や多元性のある自由な社会だと言えるでしょう。

ただかくいう僕も、二人の退職そのものは前向きに考えることができていたものの、送別会をどのようにするのがいいのか、ずっとモヤモヤと悩んで時間だけが過ぎていました。
でも、ちょうど一足先にインターンを終了して卒業した鳥居のFBを見て、やっと自分の中で分かった、腑に落ちた気がしました。彼女は、アカツキで出会ったちょっと年上の理事や、他NPOの方や、支援者や、何名かのアカツキつながりの女性に囲まれて、僕らの知らないところで送別会(女子会)を開いてもらっていたんです。

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アカツキの理事や職員だけで、アカツキを構成している訳ではない。他に様々な形で寄り添ってくださる多くの支援者や顧客や連携先との関係性の中で、僕たちは事業を展開しています。
そうであれば当然、その中にいる 人 も、アカツキの理事や職員という明確な境界線で囲ってしまう必要はないのではないか。年が近くなければできないノリ、同性でなければできない相談、同じ職場では声に出せないような愚痴だってあるはずです。

特に、代表や事務局長という存在は、組織の隅々まで気になる、知りたがる、把握したがる傾向(マイクロマネジメント)にあると思いますが、「関心は持つ、しかし敢えて見ない、敢えて手放す」というところにまでいければ、お互いに気持ちは楽になるのかもしれません。

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実際に、松島や黒田の転職、引越前の最後の一ヶ月は、多くの人からお誘いを頂き、毎日のように食事会だったようです。もちろん、それは二人個人としての人間的魅力によるものであり、アカツキという組織のおかげではありません。
ただ、理事や職員という範囲だけでは受け止めきれない範囲にまで、アカツキのコミュニティが拡がっている(または逆に侵食されているのかもしれません)ことは、エンパワメントの場としても、セーフティーネットとしても、本当に有難いことだと感じます。

そしてその多くの人から直接、またはFBなどを通して聞く話には、僕らが気づけていなかったような、松島や黒田や鳥居の素晴らしさを、耳に目にすることができました。

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人は、その悪い面というのは、誰が見てもあまり違いのないものであるし、場合によってはさほど気にすべきものではないのではという気付きすら有ります。しかし、人の善い面というのは、多くの人に触れれば触れるほど、様々な角度から光をあててできる影が違うように、新しい魅力が見えてくるものです。

それは、反対に僕達がコンサルティングの現場で、他のNPOのスタッフがどれほど魅力と可能性に溢れているか、代表が知らなかったことすら見つけて驚く機会が非常に多いことからも納得できます。

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アカツキという場所を通って、アカツキではない場所に旅立つ。
組織はあくまでも手段であり、個人の幸せが目的です。
自分たちの仲間に、異なる土地で、新しいつながり、関わりが生まれ、その人たちのより善い面が掘り起こされ、今ここに居続けるだけではきっと見つけ出せなかった可能性が拓かれていく。

組織が固定化された箱ではなく、外に向かって開き、呼吸するような「いきもの」と考えることができるなら。もっとゆるやかに、自分の大切な人を隣人に委ね、そして自分すらも自分以外のものに影響されることができるのではないでしょうか。
インターン鳥居の言った「アカツキに来て能力が成長している感じはあまりないけど、確実に自分の中で、価値観や物事の捉え方の変化が起こっていると思う」という言葉が、僕にとっては一番嬉しいものでした。

今回はやや自己感傷的で冗長な文章になってしまいましたが、何かが皆さんのヒントになれば幸いです。

文責:永田賢介