【19歩目】マンスリーサポーター制度という“諸刃の剣”

ここ1〜2年、関東だけではなく地方のNPOでも、導入の事例や希望を聞くようになった「マンスリーサポーター制度」は、毎月500円~からの少額の寄付で、NPO等の活動を継続的に支える(資金を集める)仕組みです。
仕組みが未整備のためオープンにはしていませんが、私たちも実はマンスリーサポーターのしくみ『アカツキ・つきつきサポーター制度』を持っています。

海外や東京の大手NPOでは必ずといっていいほど準備されているこのプログラムは、非常に資金用達効率が良く人気ですが、実際の導入には“諸刃の剣”と言っていいほどの、メリットとデメリットがあります。これまでのアカツキの経験(失敗)も交えながら、今回はその両面から読み解いていきましょう。

特徴その①:自動で継続される

・メリット → 継続率の向上/離脱率の減少
・デメリット → 支援者とのコミュニケーションの機会の喪失

マンスリーサポーター制度の一番の強みは、やはり自動で継続されることです。通常、賛助会員の会費の支払いなどは、郵送やメールでの継続依頼を行い、暫く経って支払いがなければ、再度メールや電話でのお願いをするのが普通です。また、継続の手続きがなされない場合は当然、その年度以降の収入が減ることになります。

自動継続であれば、それらの事務のコストを大幅に削減することができますし、一般的に7割程度と言われている継続率が、およそ9~9.5割とも言われるほどに向上します。ただそれは逆に言えば、支援者とのやりとりの機会や、支援者がそのNPOの取り組みについて、理解・判断する機会を喪失することだとも言えます。

NPOにとってのファンドレイジングは、ただの資金調達ではなく、その行為を通して、多くの市民と社会を繋げる機会となること。「社会課題の解決にお金を払ってくれるお客さん」として接するのか「共に社会を描き行動するために話し合う仲間」として接するのかは、総会の運営やガバナンスとも関わる、経営の大きな分かれ目の一つではないでしょうか。

特徴その②:毎月少額の支払い

・メリット → 寄付者に経済的負担感が少ない
・デメリット → 会計事務が煩雑になる

次に、マンスリーサポーター制度の人気が高いのは、支払いが毎月少額に分割されるため、経済的な負担が少なく、月1,000円でも年額で見ると12,000円など、大きな額を得やすいところでしょう。申込時の心理的な抵抗感も減り、退会の判断も比較的ゆるやかになります。

ただ、年1回であれば1回の会計処理で済むところが、当然12回に分割されます。領収書の発行も、その都度行うのか、年1回にまとめるのか、どちらにしても正確な管理が必要になります。クレジット決済の入金日は1~2ヶ月ずれるのが普通なので、そのタイムラグも考慮に入れなければなりません。

さらに、認定NPO法人で絶対値PSTを採用している場合は、3,000円×100人のカウントに入れるため、毎月の寄付者明細を年一回統合して(この作業を「名寄せ」と言います)、個人毎に年額を算出する手続きが必要で、これがかなり煩雑です。マンスリーサポーター制度を導入しているNPOに海外や東京の大手が多いのは、裏側にそれだけの事務を滞りなくこなせる、人員体制や仕組みがあるからこそ ということも忘れてはいけません。

特徴その③:Web/クレジットがメイン

・メリット → 若い人が手軽に支援できる
・デメリット → 年代の高い人には抵抗感がある場合も

最後に、マンスリーサポーター制度は上記①②の特徴から、どうしてもWebからのクレジット申し込みがメインになります。口座振替による収納代行も選択肢にありますが、選択肢が増え寄付者が便利になるほど、当然運用・管理のコストは増えます。

Web/クレジットがメインになるということは、自然とその利用に慣れている若い世代〜働く社会人に対して訴求力があがりますが、逆に、一定以上の年代の方は、インターネットに不慣れであるとか、クレジットカードの情報を入力することに抵抗がある場合も少なくありません。(これは。マンスリーに限らず、クラウドファンディングなども同じです)

優れた仕組みを導入さえすれば勝手に寄付者が増えるということはなく、団体の支援者層や持っている資源、戦略、いつまでにいくら必要なのかという情報から、しっかりと戦略を立てた上で、最適なツールを選択する必要があります。これさえやれば万事OK!というものはありません。

ここに書いた3点以外にも、細かい面での落とし穴も想定されます。
例えば、マンスリーサポーター制度=年会費の分割払い としてしまった場合は、初年度の積算がその会費年額にいきつくまでは「未納」つまり未入会になってしまうので、管理が面倒になることも要注意です。
また、寄付者への事前案内や説明が不十分だった場合は、本人が単発の寄付や毎年選択式の会費だと思い込んだまま、クレカ明細や口座をよく見ていないうちに長期間引き落としされ続けていた…として、クレームになる恐れもあります。

もちろん、マンスリーサポーターになった方が、NPOに仲間意識を感じる、振込が月一回にまとめられて楽になる…などという捉え方もあり、上記のデメリットがメリットに反転する可能性も大いにありますし、どのような仕組みも運用の工夫次第と言えるでしょう。

いずれにしても、様々なファンドレイジングの考え方やそれらを紹介した記事が、「事業者としてのNPO側目線」に偏ってしまい「社会の主役である市民・寄付者目線」ではなくなってしまうことに、私たちは常に注意を払わなければならないと感じています。

文責:永田賢介
*本記事内の写真は、八女市黒木町で撮影したものを使用しています。