【25歩目】助成金審査会 “カイゼン” 5つのポイント

こんにちは、認定NPO法人アカツキの永田です。

2015年からスタートしたブログ、最初は『NPOの内部コミュニケーション』、その次に、『寄付者が主役のファンドレイジング』としてきましたが、今回より、3つ目のテーマ『助成金を出すことの専門性』へとリニューアルし、お届けして参ります。サブタイトルの『〜ひとりでできぬもん!』は、これまで通りです。

アカツキはこれまで、助成金について「審査する側(お金の出し手)」「審査される側(お金の受け手)」「事務局側(お金のつなぎ手)」と、様々な立場で関わってきた経験があります。そのことを踏まえ、助成金(または補助金)の審査会の運営について、どのような“カイゼン”ができるか、ということについて、書いてみました。

①「有識者」という言葉の意味を確認する

スポーツ、ビジネス、アートなど様々な分野において、「プレイヤー」と「支援者」と「評価者」は別々なのが一般的です。助成金の審査委員は、一括りに「有識者」と呼ばれることが多いですが、何において識見を持っているのか?ということの、確認をしておくことが重要です。

そうすることで、まるで、審査委員(お金の権限を持っている人)が上、団体(お金を欲しいと思っている人たち)が下という、上下関係の枠組みに囚われることなく、審査委員(ビジネスや学術的な立場から俯瞰的に見れる第三者)と、団体(現場の知見を持って活動を行い地域をつくっていく人たち)が、「お互いに役割分担なのだ」という敬意を持って、審査に臨むことができます。

②誰が出したお金かを名確にする

助成金の審査会の中で気になる点もある団体だけど、30万円くらいなら別に出してあげれば良いんじゃない」という声を聞いたこともあります。もしこれが自分が稼いだ、もしくは顔の見える誰かから直接託された30万円であっても、このような発言になるでしょうか。

多くの場合、助成金の審査委員は自分でお金を出している訳ではありません。多くの人が企業で働いて得た利益から、または収めた税金が原資になっています。直接顔が見えてなくても、そういう一人ひとりの貴重なお金を預かっていることを伝え、責任感ある振る舞いを意識してもらう必要があります。

③プレゼン時は「アドバイス」ではなく「質問」をする

助成金審査の過程には、書類だけではなくプレゼンテーションが含まれている場合があります。この場合、審査委員の質問によって、応募団体の運営実態や事業の実現力を把握し、より精度の高い選考をするための貴重な時間です。

しかし、審査委員が事業内容に介入し、「もっとこうすべきだ」というアドバイスや、只の感想を伝えてしまうことも少なくありません。その場合は質問時間を奪ってしまうばかりか、団体側はその提案を受け入れることしかできず、結果として事業を歪めてしまうことがあります。フィードバックを行うのであれば審査終了後に、プレゼン時はあくまでも審査のための質問に限定すべきです。

④会場のレイアウトも重要

「場の力」でも、当日のプレゼンのパフォーマンスや、審議の良し悪しが変わります。心理学的に、上座/下座といった座る位置や距離感、面接や裁判のような場になると、自然と団体側は緊張し忖度し、審査委員側もいつの間にか横柄に振る舞うようになってしまうリスクがあります。

助成金はどうしても「話す能力が高い団体」「書類を書くの能力が高い団体」に流れがちですが、それが必ずしも「地域・市民が必要としている事業を作り実行する能力が高い」ことと一致するとは限りません。テーブルを外す、U字に座席をレイアウトするなど、なるべくフランクな雰囲気で、色んな団体が実力を発揮しやすいような会場のレイアウトをつくれると、より精度の高い審査会になるでしょう。

⑤委員も挨拶や自己紹介を

審査側にたつ人は、あちこちから引く手数多のことも多く、一つひとつの団体に思いを寄せることは難しいかもしれません。しかし、団体側からすれば「一期一会」です。誰かの夢や願い、課題意識を込めた事業に優劣をつけ、その後を大きく左右することは、本来は心苦しいこと。ある程度身を明らかにして向き合う姿勢を見せることが、審査結果への納得にもつながるのではないでしょうか。

癒着などのリスクを避けるために個人名や所属組織を明かせないのであれば、せめてその委員たちが選ばれている理由や基準を、事務局側で説明・情報開示するような工夫もできるはずです。

上記の5つのポイントを、審査委員になるような立場の人が読む可能性が高くありません。しかし、事務局、またはプログラム・オフィサー(PO)と呼ばれる助成金を出す側の専門職が、事前オリエンテーションの中で審査委員に伝えていくことで、効果を発揮します。

また、お金の受け手側はどうしても、審査委員や事務局からの印象を悪くしたないため、仮にもし審査のプロセスや委員の振る舞いに不満があっても、声を押さえがちです。より良い審査・ひいてはより良い助成プログラムの成果を目指せばこそ、団体側の意見を積極的に求めることで「共に」地域を育むパートナーシップを持つことができるのではないかと、思います。

*本ブログの写真は、AKBN(アケボノ)ファンド第一期審査会の時のものを使用しています。